目次
即身仏と即身成仏の違い|空海『即身成仏義』との関係
要点まとめ:
「即身仏」は 肉体が遺り祀られる修行の帰結(行法・現象)、
「即身成仏」は この身このままで悟りに至るという密教の教義(思想) を意味します。
空海の『即身成仏義』は後世の修行者たちに深い影響を与えましたが、
教義=即身成仏 と 行法=即身仏 は本来異なる概念です。
定義の違い:教義と行法のレイヤーを分けて理解
| 用語 | 読み | 本質 | 性格 | キーワード |
|---|---|---|---|---|
| 即身成仏 | そくしんじょうぶつ | この身のままで悟りに至る密教の教義(思想) | 理念・哲学・修行の目的 | 教義/悟り/身口意/曼荼羅 |
| 即身仏 | そくしんぶつ | 修行の果てに肉体が保存され祀られる状態(現象) | 実践・行法・文化現象 | 入定/木食行/保存/祈り |
空海『即身成仏義』の要点
空海が著した『即身成仏義』は、真言密教の根幹をなす教義書です。
成仏とは死後に得られるものではなく、現生(この身)で実現できる悟りの境地だと説いています。
- 成仏は来世ではなく、今この瞬間に可能である。
- 身・口・意(しん・く・い)の三業を修し、仏の三密と一体化する。
- 大日如来の智慧は、衆生の身体そのものに内在する。
- 実践では、真言・印契・観想を統合して行う。
空海の教義は「悟りの可能性」を説くものであり、
肉体を保存して祀る「即身仏」の行法を直接指したものではありません。
空海『即身成仏義』の書籍はこちら:
思想から行法へ:即身成仏が即身仏へと展開した流れ
- 思想の基盤:即身成仏の「現生で悟れる」という教義が、身体修行の価値を高めた。
- 地域的展開:山岳修行・修験道と融合し、祈りを「形」に残す文化が生まれた。
- 行法化:木食行・土中入定などの実践が体系化し、結果として肉体保存(即身仏)が成立した。
つまり、空海の思想(即身成仏)は、身体性を重視する宗教的基盤を生み、
その延長線上で「即身仏」という具体的行法が成立していったと考えられます。
誤解されやすいポイント
- Q. 即身成仏=即身仏ですか?
- A. いいえ。即身成仏は思想、即身仏は行法。似て非なる概念です。
- Q. 空海は即身仏を推奨したのですか?
- A. 『即身成仏義』では、悟りの理論と実践を説きますが、即身仏の肉体保存は後世の信仰的発展です。
- Q. なぜ日本で即身仏が生まれたのですか?
- A. 密教の身体観と修験道の苦行文化、さらに東北などの自然条件が重なり、「祈りを可視化する文化」として形成されました。
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図解:思想(即身成仏)から行法(即身仏)へ至る流れ。
